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移民と売春婦に囲まれて過ごした日々
  〜ドミニカ共和国再訪記2003〜

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◆6日目 ダイバー仲間の一員になった日

朝からダイビングの最終試験。

先生がその場で答えをチェックしてくれて、78%ゲット。
合格だ! これで今日から自分も公認の(CERTIFIED)ダイバーだ。
先生とがっちり握手。学校のみんなもダイバー仲間の新メンバー
として祝ってくれた。

午後、時間つぶしに隣町のカバレテ(CABARETE)へ。
世界的なウィンドサーフィンのメッカとして知られる場所だ。

グアグアという現地人の乗るバス(ミニバンに20人くらい人をごり押し
して走る乗り物)に乗ったのだが、とんでもない災難にあった。
ナタや斧を持っていたり、ニワトリを持ってる客が乗ってきたりする。
これは危険、、、と思って注意していたのだが、車が急停車した瞬間に
足元にあったナタらしきものが床をすべり、自分の足の指先をにわかにかすった。

一瞬のできごとだった。

包丁だってそんなに切れるわけじゃない。
だが、農家の人たちが持ってる刃は異様に研ぎ澄まされている。
足をみると、すでに傷口から血が出ていた。
ほんのちょっとかすっただけだったが、みるみるうちにサンダル中、
血だらけになった。

こういう現地人の乗るバスでは何がおこるかわからない。

カバレテに着いたらのんびり海に入ろうかと思っていたが、これじゃとても無理。
町の人に近くの病院を紹介してもらうことにした。

自分をみてくれたドミニカ人医師は英語に堪能で、丁寧に消毒してくれた。
治療費25ドルはバカ高いが(現地人の感覚では3万円くらいだろうか)、
ドミニカの医学事情についていろいろ話してくれたので勉強になった。

カバレテで夕方の日光浴を楽しんだ後、ソスアにもどって学校のみんなと
お別れ。ダイビングの仮免許も受け取り、みんなで記念写真。もう2度と
この国にもどってくることはないだろうが、ダイバー仲間とはまた
世界のどこかで会えるのを期待したい。

>>現地人のバスにのるときは靴をはいた方が安全。

それにしても、この国は本当に旅行しづらい。
というか、誰を信用していいかわからない。向こうから
話しかけてくるヤツはまずダメ。
男も女も観光客をだましてお金を取ることしか考えていない。

今日グアグアに乗ったときも、隣に座っている人に運賃をきいたら、
おもいっきりウソをつかれた。この距離で100ペソ(4ドル)はあきらかに
高すぎる。おかしいと思ったので、こんどは隣のやさしそうなおばさんに
きいたのだが、彼女も「そう、100ペソよん」と何度も首を
タテにふった。

ドライバーが乗客をだまして高い金を取ろうとするのはわかるが、
ここでは乗客もみんなグルになって協力する。外国人は本国で高い
給料を稼いでいるんだから、余計に支払って当然とでもいわんばかりだ。

ちなみにこの100ペソというのは、通貨レートでいえば500円だが、
日本にあてはめたときの現地人の感覚では5000円くらい。
外国人なんだから、新宿から渋谷へ電車で行くのに5000円くらい
取ってやれ、ってなかんじだろうか。

こういう反応をするドミニカ国民はある意味「団結力が強い」とも
いえる。同胞の国民が少しでも儲かるのであれば、たとえ自分には
メリットがなくとも協力する。こういうときに親切にも本当の金額を
教えてくれるような人はいない。間抜けにも、質問したら最後だ。

グアテマラではこういうことはなかった。身の危険は多いとはいえ、
少なくとも、外国人が聞いたら人々は親切に答えてくれるし、助けを求める
人にはやさしく手を差し延べる。ところが、ドミニカでは助けを求めたらさいご。
チャンスといわんばかりにつっこんでくる。

人にきいたりできないのだから、旅人にとってこれほど旅行しづらい
国はない。

結局バス代100ペソについては、向こうの人の責任で自分が
ケガをしたので、悪気がさしたのか(あるいは慰謝料を請求されるのが
怖かったのか)、80ペソもどってきた。
(なんだ、本当は20ペソだったんじゃないか・・・)

あとでスクールの人たちにきいたら、ソスア〜カバレテ間は
本当は10ペソらしい。まだ10ペソぼったくられていた。

>>ドミニカ人の平均日給は3.5ドル(400円)くらい。

夕方、ひまつぶしにお土産屋さんを見てまわることにした。
いくつか店をまわって、ビーチで使えそうな布を購入。
それまでは思いっきりふっかけようとしてきた店員が、
買い物を終えると急に仕事をする気がなくなったのか、
道端でのんびりタバコを吸い始めた。

こういう暇なヤローの中に入っていくのは面白い。

どうやら、ここで一日中座って会話している彼らはドミニカ人ではなく、
となりの国、ハイチからきた人たちらしい。しかも、驚いたことに彼らは
かなりの知識人だった。スペイン語、フランス語(母語)は当然として、
観光客相手の英語やドイツ語など3〜4ヶ国語が話せる。

歴史にも精通していて、イスパニョーラ島(ドミニカとハイチがある島)の
独立戦争の話から、広島・長崎の原爆についてまで知っていることを
ぺらぺらと話してくれた。

とても道端でぶらぶらしてる無職の人たちの話す内容じゃない。
というか、この国ではたくさんの言語を話せるというのは、エリートの
証明ではなく、逆に自らの≪貧しさ≫を証明するものなのだろう。
スペイン語を母語とする人たちは、そもそも他の外国語を勉強する
必要などないのだから。

ハイチ人たちはいくら頭がよくても、
正規の労働許可証がないとドミニカではまともな職につけない。
もし彼らが六本木にでもいたら、英語やフランス語ができる
黒人ということで、モテモテになっているかもしれない。
(っていうか、日本にいる外国人も相当あやしいが)

金持ちジャパンから来た観光客と、ドミニカ社会の最下層にいる
その日暮らしハイチ人ーー。

そう表現すると、まったく反対の立場にいるように
きこえてしまうが、同じようにドミニカ社会のメインストリームから
排除された人間として、どこか話が通じる。

日本はお金はたしかにあるが、住居は狭い、休暇が少ない、
仕事が厳しい、などの話で盛り上がり、結局道端にベンと居座りながら
小一時間くらい話をした。

こういう「お金=すべて」じゃない人たちがドミニカにもいると知って
ちょっと安心した。こんな人たちを見つけるのは針に糸を通すより難しいから。

>>客引きでうるさい男も買物のあとは静かになる。

夜、ホテルの紹介で近くのクラブ(HIGH CARIBE)へ行ったが、
時間が早すぎたのか、フロアにいたのは売春婦だけ。ハイチ人売春婦2人に
囲まれてかなりウザかった。

ドミニカのクラブには本当に売春婦しかいないらしい。こいつらは
お金がないからこうやって生きていくしかないってのはかわいそうだが、
いきなり人のシャツの中に手を入れたりしてくるのはマジ勘弁。

そうこうしているうちにマリソルがサングラスをかけて現れた。
ドミニカ人売春婦で唯一仲良くなった子だ。

「彼女たちはわたしのすっーーごくいい友達なの。とてもいい人たち
だから、大切にしてあげてね☆」

何をいってるのかよくわからんが、ドミニカ人がこういう心にもない
ウソをつくのにはもう慣れた。マリソルがこの子たちと友達でないのは
あきらかだった。

マリソルが他の白人のお客を引っ掛けてどっかに消えたあと、
しばらくグラスを傾けていると、となりのハイチ人女性が
ポツリとつぶやいた。

「あのドミニカ女のこと考えているんでしょ・・・」

彼女に関心のないのがばれてしまったのか、ちょっと不満そうな
表情を見せた。「ドミニカ女」というのは、どうやらマリソルのことを
いってるらしい。

その「ドミニカ女」という言葉が妙に頭に残った。

おそらく名前すら知らないんだろう。だが彼女がマリソルのことを
「ドミニカ女」と表現したのが印象的だった。
彼女たちにとってマリソルは、自分たちハイチ人とは違う、ドミニカ人の
売春婦なのだ。

同じ売春婦でも、ドミニカ人とハイチ人の間には大きな差がある。
働こうとすればいくらでも他の仕事を見つけられるドミニカ人女性と、
売春に手をそめるしか生きていく道がないハイチ人女性。

彼女たちの生き方の違いが、そのままドミニカという国に生きる
貧富の差をあらわしている。

>>同じ売春婦でもドミニカ人とハイチ人は別世界を生きている。

つまらないクラブをあとにし、ぼくはホテルへ戻った。
食堂では、ペドロが夜番をしていた。何もやることなく退屈そうだったので、
ドリンクを飲みながら雑談することにした。

ペドロはハイチ人で英仏西の3ヶ国語ができるので、ドミニカの
文化やスペイン語のスラングをいっぱい教えてもらった。

どうやらマリソルがよく言っていた「フィキフィキ」というのは
ドイツ語かオランダ語の単語らしい(意味は「SEXする」)。
スペイン語でない言葉が、こうやって観光地でおおっぴらに使われている
ってのには驚いた。売春目的でこの町にやってくるドイツ人や
オランダ人がそれだけ多いということなのだろう。
(日本語を聞かなくて少し安心したが)

ペドロは、明日の朝7時までテレビを見ながら夜番をするという。
パーティから2時、3時に帰ってくるホテル客もいるので、
ずっと起きて待ってなきゃいけない。

テーブルの上にはカラになったグラスが置かれてあった。
ホテルの従業員なのでただで飲めるのかと思ったら、タダなのは
最初の一杯だけだという。
もしもう1杯飲みたかったら、ちゃんとお金を払わなくちゃいけない。
だがペドロの給料では、ドリンク一杯飲むだけでひん死だ。

「今日はこれ一杯だよ。これ以上は飲めないさ」

その何気ない言葉に、ぼくは耳を疑った。

いくら夜だといっても、熱帯の夜はうっとおしいほど暑い。
何も飲まないでやっていけるわけがない。仕事から解放されるまで、
まだ6時間以上もある。
明日の朝まで、何も飲まずにやっていくというのだろうか。

ペドロはあきらめともとれるような表情を浮かべた。

この瞬間、ペドロにとって一杯の水がいかに大切なものか、
思い知らされた。

自分はのどが渇いたら、普通に売店でスプライトやコカコーラを
買う。500CCのペットボトルで18ペソ(60円)くらいだ。でも、
こんなペットボトルを買うこと自体、ドミニカではありえないほど
贅沢(!)なことなのだ。

アメリカ産ブランドの「コカコーラ」のボトルをもって
ゴクゴクと飲んでいるさまは、まさに富の見せびらかしだ。

ドミニカ人の平均日給は3.5ドル(400円)。
ペドロの給料は、月給にして160ドル(約18000円)。
日本とちょうど10倍の賃金格差がある。

「10倍」と一言でいっても、彼らからしたら10倍金のなる木が
間抜けヅラして町をのらりくらり歩いているのだから、まさに
格好のえじきとなるのももっともだ。

「そんなんでやっていけるの・・・?」

「ごはんしか買えないよ。それだけで精一杯さ・・・」
とペドロは苦笑してみせた。

日給400円くらいのなかから食費とドリンク代を引いたら、
何も残らない。だから、1日に何杯ドリンクを飲めるか、
というのも自動的に決まってくる。

私たち先進国の人間のなかで、1日に飲める水の量を考えながら
生活した人などどれほどいるだろうか。

カラになったペドロのグラスをみながら、
自分との生活のあまりのギャップに愕然とした。

>>日本とドミニカの賃金格差は10倍。


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