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移民と売春婦に囲まれて過ごした日々
  〜ドミニカ共和国再訪記2003〜

dominican rep まえがき 旅の地図 初日 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 あとがき


◆あとがき

信じられないほど密度の濃い1週間だった。
1ヶ月くらいいたんじゃないかって思う。

全体的におっとりしていて、のんびりしている中米と比べて、
ドミニカは刺激にあふれている。自分が中米に3ヶ月いたときの
「倍」の刺激をこの1週間で受けたような気がする。
気の休まるヒマのない1週間だった。

カリブ海諸島の中でもドミニカはもっとも安全な国とされる。
治安に問題ないし、経済も安定している。だが、まさか人々が
ここまでやっかいな人たちばかりだとは・・・。

ドミニカ人ははっきりいってあなどれない。

中米の場合、治安が悪いといっても、それは後ろからいきなり刺されたり、
撃たれたり、とかそういったレベルの話だ。中米の人々は素朴で、
親切で、困っている人がいたら助けてくれる。

ドミニカではそういった重大事件は少ないものの、ダマしあいは
日常茶飯事。いかにしてせこくお金を稼ぐか、ということを365日
考えているような人たちなので、頭の回転の速さはジンジョーじゃない。

今回の旅ではドミニカ北部の海岸町ソスアに滞在した。そのあいだ
関わった人たちといえば、ダイブスクール関係を別にすれば、
ほとんどがハイチ人や売春婦といったドミニカ社会の底辺にいる人たち。
こういう人たちの目を通してドミニカ社会をみると、5年前とは
また違った素顔が見えてくる。

前回ドミニカにきたときはまさにエリートたちとの交流だった。
いまから考えると、彼らはほとんどはおどろくほど肌が白かったし、
また話も通じた。考えていることのレベルが同じだった。
ドミニカ社会ではありえないほど裕福な人たちだった。

移民、売春婦、金持ち旅行者――。この3者が混在するドミニカの
観光都市はいびつな構造をしている。金持ち旅行者からお金をたかる
形で、移民と売春婦が存在する。

その中で3者は、お互いにドミニカ人中心の社会から虐(しいた)げられた
存在として、どこか共通点をもつ。
その共通点が、自分を今回、彼らや彼女らと近づけたのかもしれない。

日本ですら、売春婦と友だちになんて機会なんてなかったのに、
外国にくるとこういう機会(災難?)に恵まれたりするのだから、
おどろきだ。

彼女たちは驚くほど堂々としており、そして町の人たちからも
普通の同僚として受けとめている。卑猥(ひわい)な職業に手を染めた
人間として蔑視されることなく、見下されることもない。それどころか、
金持ち外国人から金をもぎ取り、その富を発展途上国の貧しい社会に
再分配する≪英雄≫として讃えられているかのようだ。

あまりにも彼女たちが町にあふれているので、町の人たちにとっても
身近な存在なのかもしれない。

いずれにしても、ドミニカのビーチは病んでいる。
そして、このような社会の矛盾を作り出しているのは、10倍の資金力を
テコに、買春目的でやってくる観光客だ。「観光客は発展途上国に
富をもたらす」なんてよく言ったものだと思う。観光客は、ただでさえ
貧しい社会において、新たな対立の溝を作り上げているだけだ。

「発展途上国の人たちは貧しくても心は豊か」なんて言葉がいかに
うそっぱちかということもよくわかる。発展途上国の人たちは、
お金もないし、心も貧しいのだ(あるいは貧しいゆえに心も病んでいる)。
少なくとも、自分にはそう思えた。

心の豊かな人たちは、発展途上国の中でもごく一部の人たちだ。
本当の底辺にいる人たちは蔑(さげす)まされた暗い過去を背負い、
犯罪がもはや犯罪とは意識されない日常を生きている。
心のゆがみがもはや「ゆがみ」と意識されなくなる。

そんな社会の矛盾をさらに底へ押し込むようにして、このイスパニョーラ島
ではドミニカ人が大手を振って生きている。その繁栄というのは、もちろん
移民や売春婦たちの犠牲の上になりたっている。
結局、ドミニカ人をみて発展途上国の人がどうこう言うこと自体、
何も見てないってことなのかもしれない。

5年前に自分がドミニカに来たとき、
「これからの自分を変えるきっかけになった」
と書いた。
でも、そもそも1週間そこらで自分の人生が変わるはずがない。
大切なのは、その限られた時間のなかで「何」をみて「何」を知るか、
ということだ。そこで自分が見たこと、感じたことが体内に消化されて、
今後の糧となっていくのだろう。

今回の旅は自分の中で結構苦しい旅だった。緊張の連続だったし、
だまされっぱなしだったし、彼らの考えていることがはじめまったく理解
できなかった。
貧乏旅行しようとしても、ドミニカにはそのような旅行者を受け入れる素地が
ほとんどできていないし、また地元の人々からも間違いなく格好の「標的」とみなされた。

「底辺」というのは本当はもっと深いのかもしれないが、これまで自分の
経験した中でもっとも暗く、また深い点をまざまざと見せつけられたような
気がする。
「日本政府派遣」の眩しい肩書きなしに、バックパック一つで飛び込んだ
ドミニカ社会で、社会の本当の貧しさと、人々の心の貧しさを
みたような気がした。

(おしまい)


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